Zエナジー論

「先達山を注視する会」を名乗る本会は、先達山のメガソーラー開発事業を主導するAmp社のみならず、これを資金面で支え、またそこから利益を上げる共同責任者として銀行や投資家の社会的責任も「注視」しております。すでに先達山開発工事に対して多額の融資をした銀行については本サイトでも明らかにし、その融資判断の妥当性に疑問を呈しておりますが、こうした銀行以外にも、この事業に多額の資金を投じている企業があります。それがZエナジー㈱です。以下では、このZエナジーについて紹介します。

本サイトの「Amp社概論」②Ampの商法と対住民姿勢にて詳しく紹介しておりますが、先達山の開発には多数の企業が関っており、その事業体制や役割分担を整理したのが左図です。

先達山の形式上の事業者が中央のAC7合同会社ですが、これは発電所を保有するための名目上の会社に過ぎず、これを「箱」として各所から資金を集め、Amp社がAC7社の名前で建設工事や住民対応を行っています。

このAC7社に資金を提供しているのが右側にある銀行や「匿名組合出資者」です。

Zエナジーは、この「匿名組合出資者」にあたります。

Zエナジーは、投資目的で、この事業に出資しています。

ですから、Zエナジーは、Amp社(=AC7社)が先達山の林地開発許可を取り付け、銀行がメガソーラー事業への融資を決めた後に、その将来的な収益性を見込んで投資を決定しております。

左は、Zエナジーが、出資を決め、公表した際の資料です。

Zエナジーが出資と書きましたが、正確に言えば、Zエナジーが「カーボンニュートラルファンド1号」という「投資事業有限責任組合」というものを作り、その組合を通じて、先達山事業への投資を行っています。

この「投資組合」とは会社ではなく、複数の出資者からお金を集めた「貯金箱」のようなものです。

Zエナジーは、投資家からこの組合にお金を集め、それを投資運用に使って利益を上げ、それを投資家に配当として還元するファンドの管理業務を行っております。

なお、この投資組合に誰がどれだけ出資したかは公表されませんので、私たち住民はもちろん、部外者は誰も知り得ません。

ファンドを管理者は、投資家に対して守秘義務があるとして、これを明かさないのです

ただし、Zエナジーのウェブサイトには、同社の大株主であるコアパートナーやパートナーの企業名が示されておりますので、これらの企業からも出資があることは間違いないでしょう。

いずれも、日本を代表する錚々たる大企業です。

福島の美しい山々や風景を破壊し、市民を嘆かせ、さらには住民間の分断や対立を生み出してきた先達山のメガソーラー事業には、Zエナジーを通じて、日本の大企業が資金を投じており、それによって配当利益を得ているのです。

こうした大企業を背景にした再エネ投資会社Zエナジー社は、鳴り物入りで設立されました。

左は設立当初に日経BP社が、同社を特集したものであり、この記事の全文は無料で公開されております。(記事全文はこちら

社長の安岡克己氏と大株主である三菱UFJ銀行のサステナブルビジネス部長の西山大輔氏の詳しいインタビューが紹介されています。

この内容は先達山の現状を知る福島の人間の目から見ると、なるほどと思わされる点が多々あります。

たとえば、安岡社長はすでに会社設立時点ですでに、今後はFIT制度が段階的に廃止されるので、開発規模の大きいメガソーラーは儲けが減り、先行きが厳しいのではといった趣旨の質問を受けています。

これに対する安岡社長の答えは、そうであるからこそ、まずは「FITで安定稼働している太陽光を300MW買い集め・・・カーボンニュートラルファンドの基盤にする」というものです。

つまり、すでにFIT認定され、収益性の高い既存のメガソーラーを集中的に買い取る方針を明らかにしています。

他方で、西山部長は、これまでメガソーラーへの融資にとどめていた銀行が、直接に開発業プロジェクトに投資するリスクを負う理由について問われて、左のようにに答えています。

つまり、同銀行は、今後は、自らファンドを作り、資金を投じて、初期段階から再エネ事業の開発に直接的に関与する方針を明らかにしたのです。

こうした経営陣の方針を考えれば、Zエナジーが先達山案件に出資したのも頷けます。

先達山はFIT制度の初期に認定を受け、高値で売電できるため収益性が高く、Zエナジーが三菱UJF銀行などの大株主からの出資金を背景に「買い集めた」案件の一つであったようです。

冒頭の事業体制の図式に示した通り、Zエナジーは投資組合を通じて、Amp社が組成したAC7社に出資しました。

出資額は不明ですが、出資の事実は、上の広報資料の通り、自ら公表しています。

ただし、Amp社は、こうした出資者について住民にもメディアにも語らず、聞かれても答えませんでした。

たとえば、昨年の朝日新聞のインタビューではAmp社は「守秘義務」の一点張りで何も答えません。Zエナジー自らが投資を公表しているのに不思議な対応です。

しかも、Zエナジーは、カーボンニュートラルの達成、社会的問題の解決のために出資を大義として堂々と出資しているのですから、せめて同社については回答すべきです。

この投資家について何も語らないという姿勢は、25年1月14日の最初の対話会でも変わらず、Amp社鈴木氏は「守秘義務」の一点張りででした。

しかし、その後、担当がAmp社長谷部氏となり、メールで対話を続けたところ、左のような説明が送られてきました。

何と先達山へのメガソーラー設置を主導してきたAmp社は、すでに将来的な売電収益からの配当権利を他社に売却しており、もはやAC7社への出資はしていないかのように言うのです。

つまり、Amp社は自分たちは、先達山のメガソーラーを保有するAC7社の実質的保有者・責任者ではないかのようなことをほのめかすようになったのです。

(なお、この対話の文脈を確認したい方は「④Amp社との対話備忘録 II」下さい。)

Amp社との一連の対話から得た事実に基づき、私たち住民は左の疑問を抱かざるをえませねした。

しかし、Amp社といくら対話しても、丁寧で納得できる説明は聞けません。

そこで、私たちはAmp社ではなくZエナジーに尋ねてみることにしました。

Amp社は投資家について何も明かしませんが、Zエナジー社は自らAC7社への出資を公表していましたから、問いあわせが可能だったのです。

幸いなことにZエナジー社は本会からの問い合わせに丁寧にお答えくださいました。

以下が、頂いたお答えです。

Zエナジーは、AC7社を実質的に管理するAmp社が信頼できる会社であるため出資した。

事業責任主体はAC7社にあるが、開発から保守までの住民への説明や対応は、Ampが「専門的見地」から行う。

先達山開発には行政許可が下りており、必要な保全措置がとられているとAmp社に確認した。

Amp社からの工事や周辺環境について定期的に情報提供受けている。

Zエナジーの担当者も現地に来ている。

福島市民の懸念は受け止めている。必要に応じて追加調査・確認をしている。

土砂流出事故後に適切な防災対策をAmpに求めた。

先達山メガソーラーはあくまでも福島県の環境に貢献する。

市民の理解と協力を得たい。

Zエナジーの株主にも、福島市民の意見や懸念を伝えている。

先達山事業は、適切な認可、環境評価、住民への説明が行われている。

ただし、市民の懸念が寄せられていることは重く受け止めている。

しかし、事業見直しは今のところ考えない。

ひきつづき、福島市民とともに歩む。

本会は、Zエナジー社が丁寧且つ誠実にお答えくださったことを嬉しく思いました。

とりわけ出資者として、福島市民の懸念を重く受け止め、市民と共に歩む姿勢を明確にされたことを心強く思いました。

ただ、Zエナジー社が、Amp社を信頼し、同社に住民への説明や対応を委ねられている点には疑問を禁じ得ませんでした。

私たちは、1月14日以来、Amp社と直接に接触し、対話を重ねる中で、同社の住民対応の問題性を肌身で感じ続けてきていたからです。

しかし、Zエナジー社が先達山の現場で起きている問題を把握し、現場に担当者を派遣して調査した以上、今後はAmp社の住民対応も含めて、先達山事業の進め方に何らかの有意義な変化が起きるのではないかと期待し、対話を続けました。

しかし、3月13日、5月10日に行われたAmp社との一連の対話会を通じて、私たちは、Amp社には、福島の住民の苦しみ、悲しみや憤りを真摯に受け止める姿勢はなく、住民に寄り添うどころか、むしろ住民の疑問や懸念への対応を嫌がり、住民から遠ざかろうとする姿勢を確認しました。つまり、Amp社には、Zエナジー社が期待するような事業運営や住民対応を行う意思や覚悟は見られませんでした。

こうした私たちの疑念を裏付けるかのように、Amp社は、ここに来て、先達山の事業責任は、自社ではなく、Zエナジー社にあるかのような発言を公にするようになりました。

Amp社はこれまで守秘義務を理由に、売電権利の売却先について明かして来なかったのですが、ここに来て一転して、売却先はZエナジーであり、同社が先達山事業の最大の出資者であることをメディアに語るようになったのです。

こうした方針転換の理由は不明ですが、私たちにとって初めて聞く事実であり、驚きでした。

ですから、当然、5月10日の対話会では、Amp社に対して、Zエナジー社の役割や責任について尋ねてみました。

このやり取りにおけるAmp社長谷部氏の発言からは、おおよそ以下のようなことが改めて確認できました。

Amp社のAC7社への出資は一部残るが、先達山事業は実質的に、Zエナジーに転売されたという説明は正しい。

Amp社が、現在も先達山事業に関わっているのは、事業責任者ではなく、あくまでも管理業務者としてである

ただし、こうした管理業務も、あくまでも契約上の義務に過ぎず、契約が切れれば、Amp社は先達山事業に関与しなくなる可能性がある。

したがって、地元に長期にわたって寄り添うことはを、Amp社は約束はできない。

他方で、Zエナジーは売電利益を享受するだけで、AC7社の経営には関与しない

それゆえに、Zエナジーは事業責任者(=実質的支配者)ではない。

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こうした説明を総合するならば、結局のところ、Amp社とZエナジー社は、いずれも先達山の事業責任者ではなく、住民と長期的に向きあって対応する責任や義務はないという話に聞こえます。

それでは、一体、誰がそのような責任を担うのでしょう?

こうした説明に納得できないので、さらに質問や確認を重ねましたが、長谷部氏は話を避けようとしました。

それどころか、長谷部氏はそもそもAmp社には、Zエナジーに売電権利を売却した事実もや時期を住民に知らせる必要はなく、質問に答えるのも「時間の無駄」とまで言い切りました。

先達山の最終的な事業責任の所在は、住民にとって極めて重要な問題です。

しかし、Amp社長谷部氏には、全くそのような認識はなく、住民の重大な関心事項を軽く足蹴にして、話題を切り替えようとします。

そして、最終的には「我々には答える立場にない」し、これ以上の質問は「その会社(Zエナジー)に直接問い合わせればいい」と他人事のような回答を残して、回答を打ち切りました。

ところが、その後、対話会の後半では、Amp社鈴木氏が、福島の市民や専門家からの先達山事業についての意見や提案をについては、Zエナジー社に伝えていることを明らかにしました。

この事実は、対話会後にもメディアで報道されました。

こうした事実は住民を益々困惑させます。

というのも、Amp社長谷部氏は先に、Zエナジー社は、AC7社に出資するだけで、同社の実質的支配者ではなく、事業責任はないと説明しました。

ところが、Amp社鈴木氏によれば、実際には先達山事業に関する住民の苦情や意見について、Amp社はZエナジー社に相談し、改善を働きかけをしているというのです。

AC7社の経営に関与せず、事業責任を負わないはずのZエナジー社に対して、なぜAmp社は相談をし、働きかけを行っているのでしょうか?

Amp社の説明と行動は矛盾しており、住民の目には、現在はすでにAmp社に代わってZエナジー社が事業責任者の位置にあるように見えます。

ともあれ、こうした住民の疑念や質問にAmp社は答えるつもりがなく、Zエナジーに直接聞くように言うのですから、本会としてもそうするより他ありません。

Zエナジー社は、本会からの先の質問状にも丁寧に答え下さりましたし、福島市民と共に歩むことを約束されています。

きっとAmp社とは異なる明快なご回答をお寄せくださることでしょう。