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AC7社がメガソーラーの建設工事を進めている事業用地は、約60ヘクタールに及ぶ広大なものです。
その用地はいくつかの地番に別れていますが、その中心は
福島市在庭坂字金堀沢1-2です。
左図にある通り、この地番だけで相当な広さがあります。
ここで興味を覚えた方は、この土地の 登記簿(登記事項証明書)を確認してみてください。
最寄りの法務局で、600円で取得できます。オンライン申請も可能であり、その場合は500円です。
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登記簿原本はネットで公開できないので、左側はあくまでも法務省が示すサンプルです。
このように登記簿を取得することで、誰でもその土地の所有者や、その所有者の変遷もわかります。
金堀沢1-2の登記簿を見ると、1990年代までは、栃木県や茨城県のゴルフ場開発業者とみられる企業の間で何度か売買が繰り返した様子がうかがえます。
そして2005年以降、塩漬けになっていたところを、2018年3月30日にAC7合同会社が売買を通じて、所有権を獲得したことがわかります。
さらに重要なことは、左側の登記簿の「権利部 乙区」を見ると、この土地に「抵当権」が付いている場合、それが示されます。
つまり、この土地を担保にお金を貸した人(抵当権設定者)がわかります。
金堀沢1-2の場合、2022年3月に複数の銀行が抵当権を設定し、融資を行っています
各銀行とその融資額は、左の図の通りです。
新生銀行が融資額が最も大きく、それ以外の7つの地方銀行が、それぞれ5億円~30億円ほど融資しています。
これらの地方銀行のうち、事業用地である福島市に本店のある東邦銀行、お隣の宮城県仙台市に本店を置く七十七銀行も出資しています。つまり地元を代表する地銀が融資しています。
それ以外にも東北の秋田銀行、東北銀行(盛岡)や、遠方の静岡、福井、鳥取の地銀までが融資しています。
なお、それぞれの銀行の出資額は異なりますが、利息(年利)はすべて1.5%と同じです。
このように複数の銀行が一団となって、同じ条件(契約)で実施する融資のことを「シンジゲートローン」と言います。
そして、その中心となる銀行を「アレンジャー」と言います。この場合、新生銀行がそれにあたります。
先に新生銀行がAC7社の先達山案件に「グリーンローン」を実施したことに触れましたが、実はそれに合わせて、他の地銀にも呼びかけて、シンジゲートローンを実施していたのです。
以上の経緯を踏まえて、改めてAC7社を支える資金構成を整理したのが左の図です。
Amp社からの出資に加えて、今度は新たに銀行団がシンジゲートローンを組んで、開発資金をさらに融資してくれたのです。
しかし、皆さんがよくご存じの通り、銀行は確実な担保がなければ、そう簡単に融資してくれません。
先達山の山林が、百億をこえる巨額融資の担保になるとは思えません。
しかし、実際には、その前に起きたある出来事が、この先達山の用地の価値を一挙に高めていました。
それが、福島県がAC7社に対して与えた「林地開発許可」です。2021年10月13日のことです。
その理由は、2013年に公布された「再エネ特措法」と関係しています。
この法律は、再エネ普及のために「固定買取価格制度」(FIT)を導入しました。簡単言えば、再エネで発電した電気は、市場価格より高い値段で、国が買い取ってくれる制度です。
これにより、適当な用地を取得し、発電設備の設置計画を立てて国に申請し、FIT事業者として認定を受ければ、必ず儲かるということになりました。
この結果、本来は環境にやさしいエネルギーの開発を目的としていた再エネ事業が、単に「利益」の出る事業として注目を集めるようになり、投資家や金融機関などが、一気に再エネ事業に流れ込んできました。
そして、発電場所を求めて、日本中の山々や土地を買い集め、発電設備を設置できるよう各地の自治体に「林地開発許可」を求めるようになったのです。
「林地開発許可」さえ下りれば、必ず儲かるのですから、再エネ事業者に融資する銀行にとっても、その有無は決定的に重要です。
したがって、先達山の場合も、福島県がAC7社に「林地開発許可」を出したのを見極めてから、銀行はシンジゲートローンを実施したわけです。
このように、行政からの「林地開発許可」は、再エネ事業者にとっては、事業利益を約束する「打ち出の小槌」のようなものなのです。
AC7社が「林地開発許可」を得て、建設工事に着工し、再エネ発電に向けた事業が軌道に乗り始めると、さらにこの「儲かる」事業に注目し、出資する企業も現れてきます。
先達山の場合は、Zエナジーという企業です。
この会社は2022年12月から、AC7社の福島市での太陽光発電事業、すなわち先達山のメガソーラー事業に参画(=出資)したことを公表しています。
しかし、出資額は公表されておらず、不明です。
ちまに、このZエナジーは株式会社であり、企業情報が公開されています。
同社のウェブサイトによれば、コアパートナー、すなわち主たる出資者と考えられる企業や、それに続くパートナー企業は、いずれも日本を代表する大企業です
福島市の住民の間では、先達山の環境破壊に対する批判が強まる中で、こんな工事を推進するのは「〇〇国の企業だ」といった排外主義的噂が流れたりもしました。
しかし、実はこの事業を資金面で支えている主たる出資者は、日本を代表する錚々たる大企業なのです。
これらの企業がお金を出し合い、Zエナジーを通じて、AC7社にお金が注ぎ込まれているのです。
福島の民が、先達山の環境・景観破壊に怒り、嘆いていることを、果たしてこれらの企業はご存じなのでしょうか?。
ともあれ、Zエナジー社の参画により、AC7社の資金構成は、左図のように変化したと思われます。
AC7社は、日本を代表する銀行の融資、日本を代表する大企業による出資に支えられているのです。
当然ながら、資金面で苦労することなく、堂々かつ余裕綽々で、建設工事を進められるのでしょう。
この理解が正しければ、先達山の破壊に憤る福島の住民は、「注視」の矛先をAC7社だけでなく、それを資金面で支える大企業連合にも向ける必要がありましょう。