新生銀行論 ー Amp社への最大融資者

Amp社概論の①、②でも度々、言及してきた通り、Amp社のメガソーラー事業を資金面で支えてきたの新生銀行です。逆に言えば、新生銀行が資金を融資するからこそ、先達山開発も続いているのです。したがって、当然、融資銀行として、新生銀行にはAmp社と同等の責任があると言って過言ではありません。以下では、先達山案件における新生銀行の役割を検討し、その責任について問いかけを行います。
 なお、新生銀行は、2023年により「SBI新生銀行」に名称変更していますが、先達山案件は「新生銀行」時代に融資が開始されましたので、便宜上、以下の説明では「新生銀行」の名称を用います。

すでに「Ampが街にやってきた」で触れた通り、新生銀行がAmp社と共に福島のメガソーラー事業に関与し始めたのは、2017年7月のことです。

左のプレスリリースにある通り、この時、新生銀行は、台湾企業が福島市に建設中であった太陽光発電所を購入する際に融資を行いました。

この時、Amp社は、「ASGJ PROJECT2」という合同会社を作り、これを通じて、福島市の発電所を「譲り受けた」と書いていますが、要は台湾の企業から事業を丸ごと買い取ったという意味です。

新生銀行は再エネ事業に経験・知見があり、会社買収に関するファイナンスの構築能力があると自負したうえで、今後ともメガソーラー事業に積極的に融資することを宣言しています。

ちなみに、この融資案件が福島市のどの位置にある発電所であり、それが周辺住民の環境にとってどのようなプラスの効果があるかなどは全く説明されていません。

要はこの資料は、新生銀行が、顧客や投資家向けに、今後、自分たちは安定した収益性の見込めるメガソーラー事業/市場に積極的な融資を行うという宣伝です。

単に収益が見込めるから福島の事業にお金を出すのであって、新生銀行が、特段、福島という土地・住民などに関心があるわけではありません。

すでに「Ampが街にやってきた」で指摘した通り、Amp社は、この発電所(縄文遺跡の「じょーもぴあ」の隣)を2023年2月に他社に売却しており、新生銀行も融資金を回収済みと思われます。

さて、新生銀行が「じょーもぴあ」案件に続いて、福島市でのAmp社事業に融資したのが、先達山案件です。

既存の事業を買収した「じょーもぴあ」案件の場合とは異なり、先達山は、Amp社が用地取得や土地造成の段階から手掛けた開発案件でした。

Amp社は、先達山の用地取得のめどが立った時点で、AC7という名の合同会社を設立し、2019年から福島市の住民に「高湯温泉太陽光発電所」の建設計画として、先達山案件の説明を開始します。

この時点では、新生銀行は、AC7社には融資しておりませんが、後にAmp社が林地開発許可を得るとすぐに、融資を行います。

ちなみに、Amp社が福島県から林地開発許可を得たのは、先達山に用地を取得してから約3年半後の2021年10月のことでした。

この間、Amp社の計画には、一部の市民からは、反対の声や要望書が出されいましたが、これを振り切って、計画は進められました。

また、Amp社は、開発計画に地元住民の合意を得ようと、先達山近くの特定の町内会や組織に対して寄付という形で多額の金銭提供を行いました。ある地域には現金1800万円が提供されたことがメディアの取材で明らかにされています。
(「開発行為同意書に代わる資料」、河北新報記事)

こうした行為はすべて水面下で行われ、どれほどの範囲にどれほどの金銭が提供されたかは一切明かされておらず、当時から今に至るまで地域間・住民間の分断や対立をあおる重要な要因となっています。

またAmp社が開発申請の際に提出した景観予測が杜撰であり、後に福島市長に「仮称申告」と指摘され、また県の森林審議会でも「うっすらとラインが見える」程度にしか景観変化はないと虚偽に近い発言をしていました(福島市の対応上の問題, 福島県の対応上の問題 参照)

果たして、新生銀行がAmp社のこうした開発申請過程の活動・言動をどの程度把握し、どのように評価していたのかはわかりません。

しかし、はっきりしていることは、新生銀行はAmp社に対して全幅の信頼を置き、先達山への開発許可が下りた直後に約170億円の融資を決定したことです。

しかも、新生銀行は、このAmp社の事業は、福島の環境改善に貢献するものであり、それゆえに環境にやさし「グリーンローン」として融資を決定しました。

この時の新生銀行の評価報告は、同行のホームページにおいて全文公開されております
新生銀行の左の画面へのリンクはこちら

各年度ごとのグリーンローンの内容が積極的に広報されており、Amp社のものは2021年12月22日付でプレスリリースと評価レポートが掲載されております。


当然ながら、新生銀行の立場では、このAmp社の先達山開発に対する融資は、環境改善に資する優良案件なのですから、当然、隠すどころか、積極的に社会に広報するべき内容です。

ですから、私たち福島の住民も新生銀行が、どのような理由や判断で、Amp社の事業に融資を決めたのかを知ることができます。

左の資料は、「グリーンローン評価書」の最初のページです。(原文への直接のリンクはこちら)。

Fukushima West太陽光発電所となっていますが、これが先達山のことです。

19ページにわたる長文の報告ですので、全ページを紹介することはいたしません。ただ、新生銀行の融資責任を考えるうえで非常に重要な文書なので、福島の住民の皆さんには、ご一読を強くお勧めします。
原文への直接のリンクはこちら

要点は左の通りです。

融資を決定した銀行の評価ですから、肯定的な内容が並ぶのは当然です。

また、この時点では実際の開発工事の前でので、あくまでも「机上の情報・論理」において、Amp社の先達山事業が高く評価されても不思議ではありません。

しかし、その後に実際にAmp社が福島で行ってきた開発行為・地元対応の実態をを知る私たち住民から見れば、この時点での新生銀行の評価の甘さには驚くしかありません。

とりわけ、先達山の開発が「土石流危険エリア」にあることを知りながら、開発工事によって、逆に住民の安全が高まるなどと評価していたことは見逃せません。

もっとも、新生銀行が、こうした評価に絶対的な自信を持っていたわけではありません。

それが分かるのは、評価書の最後に(19ページ)記された左の留意事項です。

つまり、新生銀行は、Amp社からの情報を下に、多少の追加調査をしたとはいえ、最終的には「環境改善効果をはじめとするその内容・記述」に何ら確証もなければ、責任もないと認めているのです。

さらに、そこまでの確証がないからこそ、今後、新たな状況が生じたり、情報を入手した場合には、評価も変え得るし、取下げもあるとしています。

したがって、新生銀行としては、この評価に基づいて融資するが、他行が追随する場合は、自己責任でやって欲しいとも言っています。

自らの評価に自信がなく、留保をつけるという意味では誠実です。

しかし、結局は、次のような自信に満ちたプレスリリースを発表し、実際に巨額融資を行ったのですから、当然、その融資に対する社会的責任は伴います。

これは、すでに「先達山概論」の①AC7合同会社でも紹介した資料です。(原文リンクはこちら

こうして、新生銀行は先達山案件を「明確な環境改善効果が認められる事業」であると認め、それゆえにAmp社が組成したAC7合同会社(以下、AC7社)に「グリーンローン」の実施することを対外的に宣伝したのです。

当然、このプレスリリースでは「グリーンローン評価」の内容を抜粋してまとめられています

いわく、この案件が日本政府、福島県・市のエネルギービジョンに貢献する。

Amp社は世界的な再エネ会社であり、再エネ事業への投資・運用実績がある。

Amp社には「地域住民と密にコミュニケーション」を図り、「住民の意向を踏まえた土砂災害リスク低減や安全配慮のための取り組み」を行う能力がある。

さらに、Amp社は造成工事中も「第三者機関を起用した造成計画のレビュー」を自主的に行い、「安全なプロジェクトの実現」に努めている。

「生物多様性」の保護のために「先進的な取り組み」を行っている。

こうした評価に基づき、新生銀行はAmp社の先達山開発に融資を決定したのです。

それだけでは、ありません。

新生銀行は、この融資にあたって、他の銀行にも声をかけ、最終的に左の銀行と融資を分担しました。

つまり、新生銀行は、業界用語で言う「アレンジャー」として「シンジゲートローン(協調融資)」を実行したのです。

総額180億円を超える巨大な融資です。これが実行されたのは、2022年3月のことです。

そして、この融資によって、Amp社は先達山での開発工事は可能となったのです

したがって、これらの銀行は、すべて先達山開発による環境・景観の破壊、そして地元社会にもたらされた苦痛と混乱に対して社会的責任があります。

とりわけ「アレンジャー」である新生銀行の責任は重大です。

そこで、私たちは、新生銀行が、この福島の住民に多大なる苦痛と迷惑をもたらている融資案件をどのように考えているのかを確認すべくメールで問い合わせました。

2025年1月17日のことです。

なお、この問い合わせに至った直接のきっかけは、この数日前の1月14日に行われたAmp社との初めての対話会です。

この時、私たちは、Amp社の住民に対してはもちろんのこと、立会人として同席した福島県議と福島市環境審議会長に対しても、あまりにも不遜かつ不誠実な対応を取る姿を目の当たりにしました。
(詳しくは「Amp社との対話備忘録 I」をご参照)

また、その対話の場で、Amp社が事業責任者ではなく、管理業務を委託された企業に過ぎないとして、住民に対する責任を回避する発言をしたことにも驚きました。

こうした体験を経て、私たちは、Amp社のみならず、その背景にあって、このような企業の開発事業を資金面で支えてきた銀行の責任も重大であると思うに至ったのです。

そして、これが一つの契機となり、先達山開発の問題について情報をあつめ、広く住民と共有するための「先達山を注視する会」も立ち上がってきたのです。

これに対する新生銀行からの回答は、左の通りです。

まずは、回答を送って下さったことには感謝です。

また、融資者として、景観問題や昨年の土砂流出事故についての責任を重く受け止めると、一定の責任をお認めになったことも評価できます。

しかし、私たちが問題提起したAmp社の責任回避的な姿勢についての明確な回答がありません。

そこで再質問をしました。

既に述べた通り、この時、私たちは「先達山を注視する会」を立ち上げ、2月10日に初めての報告会を開催すべく、準備を進めていました。

新生銀行には、この住民集会の予定を伝え、頂いた回答を住民と共有する旨を伝え、回答を待ちました。

しかし、2月10日までに回答は届きませんでした。

それが届いたのは、2月13日の事です。

今回の回答では、融資銀行としての責任上、土砂流事故や景観問題について、現地調査や行政機関へのヒアリングなどを通じて現状把握をしていることが明らかにされました。

また、新生銀行は、Amp社が実質的な事業主体であると認識し、融資銀行として、Amp社の住民に対する説明や対話のありかたについても、「適切な監視」を実行するとの立場も明確に示されました。

つまり、Amp社は先の1/14の住民対話会では、自らは「管理委託業務者」に過ぎないと事業責任を回避する姿勢を示しましたが、新生銀行はそれを否定し、Amp社に責任があるとしたのです。

さらに、融資期間にわたって、先達山案件が「グリーンローン評価」にかなう状況であるがモニタリングを継続することも約束されました。

以上の内容は、これまで私たち住民には明確に示されてこなかった事業主体や責任所在について、踏み込んで明らかにした点では、一歩前進です。

ただし、これで問題が解決するわけではありません。

新生銀行がAmp社の事業運営を監視する立場を明確にされた以上、その監視が適切であるかなど、他にも尋ねるべきことがいろいろ出てきます。

そこで、新生銀行とはその後も対話を続けました。

以下のやりとりは、新生銀行の回答(2/13)を受けてからのものです。

最初に尋ねたのは、回答のタイミングの問題です。

本会の活動は、先達山に関する様々な情報を、住民と幅広く共有することが目的です。

新生銀行としても、住民に広く理解を求めるのであれば、住民集会に間に合うように回答をして下さったも良かったと思います。

2週間以上も回答準備期間があったのですから。

次に、新生銀行が現場の適切な現状把握に努めていると強調されるので、住民側からの意見を聞いたことがあるか尋ねました。

Noです。なぜ、住民とは話さないのでしょう。

Amp社への指導や指示といった言葉は、福島県や福島市の行政当局者もしばしば使います。

新生銀行の回答も、行政当局とそっくりです。

結局、Amp社に委ねて、報告を待つのみで、何ら実効性ある指導をしている様子がありません。

例えば、ここで改善策としてあげられたAC7のホームページは、こちらのリンクにありまが、その内容の貧弱さは目を覆うばかりです。

これは昨年の土砂流出事故後に行政からの指導でAmp社が慌てて作ったものですが、これを新生銀行は「丁寧な報告」と把握しているようです。

第四点は、事故発生時の責任の所在についてです。これの点は、実際に災害の危険におびえる福島市の住民に特に重要な点です。

将来的に、先達山で大規模な災害など事故が発生した場合、その責任は管理業務委託契約により、Amp社が負うというのが新生銀行の理解です。

ただし、この「管理業務委託契約」の内容がわからない以上、住民がAmp社が最後まで責任を負ってくれると期待し、確証を得ることはできないでしょう。

つまり、これでは安心できません。

第五点は、今日まで続く現場視察の問題です。

Amp社は3/13の対話集会で、4/15以降に現場への住民視察を認めると公に発言し、これは福島の地元メディアも広く報じています。

ところが、4月となった今日までAmp社は、本会からの再三の要望にもかかわらず、この現場視察について具体的な協議を行っておりません。

にもかかわらず、その一方で、すでに福島の一部メディアに対しては、4/25に工事現場への立ち入りを認めると通知しています。(「新着情報」参照)

これもまた、Amp社が住民に対して不誠実であることの証です。

新生銀行は、Amp社の住民対応についても「監視する」と言いますが、その実効性は全く見えません。

最後に環境への悪影響の現状をどの程度把握しているのか聞いてみました。

これも、Amp社からの報告を受けるだけのようです。適切な働きかけが何であり、どのような効果を生んでいるのかを問いたいです。

もっとも、この現場の環境破壊の問題については、追って本サイトで別項を設けて詳しく論じる予定です。

ちなみに、新生銀行から上記の回答を待つ間に、Amp社からは、私たち住民が以前より求めていた公開での対話集会(3/13)に参加するとの連絡がありました。

新生銀行は、Amp社の住民対応についても監視する立場ですので、私たちはぜひこの機会に新生銀行にも、この集会の様子を見ていただきたく思いました。

そこで、回答を督促するついでに、この対話集会にもお誘いしました。

しかし、質問状への回答はあったものの、住民対話には参加しないとのお返事です。理由は一切明示されません。

これでどうやってAmp社と住民の間で生じている摩擦やトラブルを把握し、Amp社が丁寧に対応しているかを「監視」していけるのでしょうか?

結局のところ、これまでのやり取りからは、新生銀行は、いまだに2021年12月時点での「グリーンローン評価」を維持しているように見えます。

この間、先達山開発の環境・景観面での問題が明らかとなり、またAmp社の不適切な対応に対する住民の苦情や不満が噴出している現実を前にしても、新生銀行にはその現実を直視するつもりはないようです。

言うまでもなく、私たち住民は、もはや新生銀行の「グリーンローン評価」に記載されたAmp社に対する評価など今では信頼しておりません。

というより、完全に間違っていると思います。

とりわけ、新生銀行のAmp社が、国際基準においても環境や人権に配慮した企業であり、住民とのコミュニケーションを重視し、地元との信頼関係や共生を図っているといった評価を疑問視しております。

左はそのさらなる証左です。

私たち住民は、Amp社の住民対応があまりにもひどいので、カナダのAmp本社(Amp Energy)にも何度も問い合わせのメールを送りました。しかし、一切、返事がありません。

そこで、カナダ大使館の商務官経由で、きちんと住民と対話するように勧告してもらいました。それでも今日まで一切返事がありません。

英語ではLike father, Like sonという言葉あります。親会社に子会社(日本法人)も倣うのでしょう。

果たして新生銀行は、これでもまだAmp社が住民と丁寧にコミュニケーションする企業と言い得るのでしょうか?

最後に新生銀行について、私たち福島の住民のみならず、日本の国民が思い出してほしいことがあります。

それは、新生銀行が誕生した歴史的経緯です。

おそらく今の30代以下の若い世代は、ほとんどご記憶ないかと思いますが、新生銀行の前身は、日本長期信用銀行(長銀)でした。

名門銀行とうたわれた長銀はバブル期に不適切な融資を重ね、最終的に経営破綻し、倒産しました。

この長銀破綻は、歴史に残る重大ニュースであり、左の通り、NHKのアーカイブスにも1998年を代表するニュースとして記録されています。

映像をご覧になりたい方は、NHKのリンクにどうぞ。

この時、さらなる経済・金融混乱を懸念した日本政府は、多額の公的資金を投入して長銀を一時的に延命させ、国の主導下で破綻処理を進めました。

そして、翌年、米国のリップルウッド・ホールディングズに売却を認め、長銀は名称を「新生銀行」と変えて再発足しました。

なお、売却時の価格は、わずか10億円でした。

その後、2020年代に入り、SBIホールディングスの傘下に入り、その子会社となり、2023年1月に「SBI新生銀行」と再び名称を変えて今日に至っています。

バブル崩壊時に経営が悪化したり、破綻して、公的資金の注入を受けた銀行は、他にもありました。左は最近のNHKの報道資料からの引用です。

しかし、これらの銀行やその債権を引き継いだ銀行はいずれも今日までに公的資金を完済しています。

言うまでもなく公的資金の原資は国民の税金であり、これは銀行が国民から借りた借金と同じですから、速やかな返済が必要なのは当然です。

ところが、これを唯一、返済してこなかった銀行があります。NHK報道でもはっきり、こう指摘されています。

「しかし、返済が済んでいない銀行が1つだけあります。旧長銀を前身とするSBI新生銀行です。今も3300億円の返済が済んでいません」

そして、この公的資金返済の完済の見通しがたち、政府との間に合意がなされたのは、つい先月の2025年3月のことです。(左はSBIの広報資料

国民としては、この完済計画が予定通り、実行されることを願うばかりですが、この約三十年間、新生銀行だけが公的資金の返済を怠ってきたことを私たちは記憶すべきでしょう。

この返済計画が具体化してきた時点で、日経新聞も「遅すぎたSBI新生銀の公的資金完済」と題した社説をかかげ、次のように批判していました。(記事はこちら

「[新生銀行は]一時国有化されてから四半世紀が過ぎ、遅ればせながら完済にたどり着く。国有化後も長きにわたって経営の迷走を招いた反省を金融行政の糧にすべきだ・・・
・・・SBI新生銀は公的資金の完済後も、国の支援で立ち直った事実を忘れてはならない。価値ある商品・サービスを提供し、社会に貢献する姿勢が問われる」

言うまでもなく「国の支援」である公的資金の原資は、私たち国民の税金です。

この国民の税金によって経営が支えられてきた新生銀行であればこそ、なおさら、社会のために価値ある商品・サービスを提供し、貢献すべきとの日経の指摘は、まさに正論です。

とすれば、現在、新生銀行が、巨額の融資を続ける先達山の開発案件は、果たしてこの指摘・期待に沿うものでしょうか?

福島の環境を壊し、住民に苦痛を与え、さらに地域社会の分断や対立を招く案件を資金面で支える銀行。

これが国民の税金で支えられてきた新生銀行の現在地のようです。

ここで思い出させれるのが、福島市在住の画家であり、先達山の破壊に対していち早く声を上げてきた矢吹武さんの画集の一コマです。

こうした新生銀行に対する私たちの疑念を一層強める報道資料を見つけました。

新生銀行のウェブサイトでは、同行がいかに環境に配慮し、環境改善に資する融資を行っているか、また、普段から環境意識の向上に向けた社内研修に取り組んでいるかといったニュースが、積極的に発信されています。

左は同サイトのは、2023年11月の広報資料です。

この日、会長以下の役員と行員たちが講義を聞いた後、「moritomirai(モリトミライ)」というカードゲームで楽しく「森林の持続可能性や地球温暖化問題」について学んだことが紹介されています。

この「モリトミライ」とは、山梨日日新聞が、プロジェクトデザイン社という企業と組んで開発したオリジナルのカードゲームです。(同紙の記事はこちら

このゲームの紹介サイト(左)によれば、プレーヤーは、それぞれ、「山の所有者、森林組合、猟師、行政職員、住宅メーカー、学校の先生など様々な仕事」の役割を引き受けます。

そして、互いの利害や立場を尊重しながら、対話や協力を通じて、いかに森林資源を守り、利用し、循環させていくかを実践的に楽しく遊びながら学ぶことができるようです。

素晴らしいゲームです。

しかし、プレーヤーの中には「銀行」はあったでしょうか。「メガソーラー事業者」は含まれていたのでしょうか?

果たして、新生銀行の経営陣、そして行員は、先達山の造成工事により、一体、どれだけの森林が伐採されたのか本当に理解されているのでしょうか?

どれだけの森林の保水効果が失われたのか、どれだけ動植物の住処が奪われたか、本当に真剣にうけとめているのでしょうか?

新生銀行の融資によって、この開発は支えられ、そして現在は、黒光りするパネルが着々と張られはじめています。

この10万枚の太陽光パネルは、今後数十年、日光を遮り、森の再生を阻み、福島の森林資源の活用を不可能とし、そして地元の住民が愛した風景を奪い、災害の危険と不安の中に置き続けるのです。

カードゲームでの研修も良い。

しかし、「遊び」では困るんです。

私たち住民は現実の中に生きています。

新生銀行にとって「サステナビリティ」を学ぶ上で、最良の研修は、福島の現地に行員を送ることと、現実を直視させること。

そして、私たち住民と向き合って、対話をすることではないでしょうか?

最後の最後にもう一言。

現在のSBI新生銀行の会長は、五味廣文氏です。

この方は、同行のホームページで詳しく略歴が紹介されています。

1998年の長銀破綻の前後に大蔵省の銀行局調査課長や金融監督庁の検査部長を務めていた方です。

元政府の大蔵省/金融庁にいて、銀行を監督・監視していた立場の方が、退官後にしばらくの時を経て、今度は銀行側の経営責任を担うようになったわけです。

この異例の人事については、日経新聞も「審判はコーチになれるか、新生銀会長人事と金融庁の葛藤」という見出しで報じました。(記事はこちら

それはさておき、この方の下で、公的資金の返済の見通しがたったことは、一定の成果なのでしょう。

しかし、新生銀行が先達山のメガソーラー事業のような福島の環境を破壊し、苦しめるような案件で利益を得ていることを会長はどうお考えなのでしょうか?

さらに会長は2020年6月から福島銀行の社外取締役を務めていた期間もあります。当然、福島の山並み、福島の人々、福島の社会についてもよくご存じでしょうし、愛着もおありでしょう。

私たちは、先達山案件は、新生銀行の社会的評価が問われる極めて重大な案件として「注視」しています。

五味会長におかれましても、ぜひともこの案件が果たして「グリーンローン」にふさわしいものであるのか真剣なる「注視」をお願いしたく存じます。