以下では、事業者の概要について説明していきます。
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左のような企業情報については、ネット上情報サービスを通して入手できます。
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合同会社とは、一般的に左のような特徴があります。
要は、簡単に設立できる会社で便利であるが、社会への公開性(決算報告の義務)が求められていないため、会社の内部事情をうかがい知ることができない。
その分、社会的認知度・信頼性は低くなります。
皆さんが知っている大企業は、ほとんど「株式会社」ですよね。
AC7合同会社の代表社員は、AC7一般社団法人。
「社団法人」と聞くと、大きな財団やNGOのように誤解されがちですが、実際には個人の会社(法人)のことです。
一般社団法人としてのAC7が、合同会社としてのAC7の中核を構成する構造(=代表社員)となっています。
この場合の「社員」とはいわゆる「従業員」ではなく、会社に出資した経営者・責任者のような意味合いです。
社団法人AC7が、合同会社AC7の社員なので、その代表理事である中村武氏が、合同会社AC7においては「職務執行者」という肩書で経営の責任を負うわけです。
両社は責任者が同じなので実質的に同じ会社と見て構いませんが、異なる形態の別々の会社です。
さて、これでAC7合同会社の構造は見えたと思います。
それでは、社会的信頼も低く、資金も乏しいはずの合同会社が、なぜ巨大なメガソーラーを建設できるのでしょう?
それは、実はAC7合同会社には、他の大口の出資者いたからです。
その会社とは、カナダを拠点とするグローバル企業であり、再エネ事業の投資で名を知られたAmp Energyです(以下、Amp社)
Amp社が出資者である事実を、私たちは、2021年12月22日に、新生銀行が発表した公式のプレスリリースによって知りました。
新生銀行のプレスリリースはこちら。
この新生銀行のニュースに、Amp社がAC7合同会社を組成したと明記されております。
さらに、新生銀行はこのAC7合同会社(以下、AC7社)に、太陽光発電所の建設資金を融資することを発表しています。
しかも、その融資とは「明確な環境改善効果が認められる事業」のための「グリーンローン」という名目でした。
先達山の環境破壊・景観悪化に苦しめられ、怒り、嘆き苦しむ福島の住民にとって、驚きの事実です。
新生銀行はこの「グリーンローン」は、国や福島県/市が推進する再エネ普及や循環型社会の実現に貢献するものと位置づけています。
さらに注目すべきは、新生銀行が融資の対象としてAC7社を選んだ理由です。
それはAmp社が世界的な再エネ会社であり、再エネ事業への投資・運用実績があること。
第二に、Amp社は大規模造成工事にあたって「地域住民と密にコミュニケーション」を図り、「住民の意向を踏まえた土砂災害リスク低減や安全配慮のための取り組み」を行う会社であること。
さらに、造成工事中も「第三者機関を起用した造成計画のレビュー」を自主的に行い、「安全なプロジェクトの実現」に努めていること。
第三に、「生物多様性」の保護のために「先進的な取り組み」を行っていること。
要は極めて環境に配慮し、住民の意向を大事にし、徹底した安全管理の下で造成工事を実施する会社という点です。
それでは、Amp社とは、実際にどのような会社でしょうか。
同社ウェブサイトで調べてみましょう。
ただし、一定の英語力が必要です。
左は、その抜粋(翻訳)です。同社は日本を重点投資国の一つに位置付けており、すでに日本各地でで再エネ事業を展開しています。
そして、その中には、我らが先達山案件も含まれます。
Amp社は再エネ投資会社ですから、先達山は有望な投資対象、すなわちビッグプロジェクトの一つとして、世界に宣伝されていると言ってよいでしょう。
福島の住民は、自分の見慣れた故郷の山・風景を一変させるような開発プロジェクトが、世界の投資家むけの宣伝材料になっていることを知るべきです。
グローバルな企業の投資活動が、日本を含む世界各地に及び、そして福島の住民のローカルな生活・暮らしにも影響を与える。
ここには、まさに「グローバル」な動きが、「ローカル」に直結する「グローカル」な現象/問題が生じていると言えるでしょう。
ついでに、Ampの経営陣の顔ぶれを見てみましょう。
まず設立者&CEOのデーブ・ロジャース氏。
カナダの炭素事業投資会社の出身であり、30億ドルという巨額な資産管理の経験のある経営者であることが紹介されています。
次に日本事業の責任者として紹介されているのが、マーティン・シュタイン氏。
この方は、ロンドンのING銀行や上海銀行に勤めた経験を持ち、さらには新生銀行につとめ、再エネ事業投資部門の設立者だったそうです。
ん、「新生銀行」?すでに、上で名前が出ましたよね?
そうです、AC7社を組成し、先達山案件に「グリーンローン」を実施した銀行です。
ということは、シュタイン氏は、もともと新生銀行で再エネ投資分を立ち上げ(「グリーンローン」を考案?)、その後、Amp社に移り、今度はAmp社に「グリーンローン」を呼び込んだのだろうなと、その経歴から推測できます。
違っていたら、教えてください。Hi, Mr. Stein. Correct me, if I ’m wrong.
さて、Amp社のウェブサイトをさらによく見てみると、Amp社が再エネ投資の資金をどこから調達したのかも詳しく書かれています。
それは、ZOMA Capitalというアメリカの投資ファンドです。
英語の人物情報紹介サイトによれば、このファンドの設立者は、ウォルマートの創始者の孫にあたるBen Waltonという方だそうです。https://www.influencewatch.org/person/ben-walton/
このファンドを通じて、再エネ事業に投資する資金として200億カナダドル(当時で150億円ぐらいでしょうか)を獲得したことを、Amp社は、2019年10月11日付で誇らしく発表しております。October 11, 2019
以上を踏まえて、AC7合同会社の構成や資金的背景を整理したのが左の図です。
米国のZOMA Capitalからの巨額資金が、Amp社とその日本法人を経由して、AC7合同会社に流れ込んだことがわかります。
こうした設立間もない合同会社に過ぎないAC7社に対して、Amp社が出資したことで、同社は潤沢な資金を持つようになりました。
しかし、上でも触れたように、合同会社は決算報告の義務がなく、その内部は窺い知れないので、その出資時期や金額は不明です。
ただし、後で見るようにAC7社が、先達山の事業用地を取得するのは、2018年3月31日です。
となると、同社は2018年1月の設立直後に、Amp社から出資を受けて、その資金を元手に用地を取得したと考えるのが自然でしょう。
それでは、次の「AC7社への融資・出資企業」では、AC7社の用地取得過程を見ていきましょう。